あの日
目、さえ、ない夜。星もないと信じきっていた
まっしろな画面が
月もない街が、黙れと言って……
街を歩いていった。
慰みがなくて、終電を見送った。カフェの外は文学に包囲されていた。
空を飛ぼうとして、そうするしかなくて、助走をつけて派手にこけた、すると落ちるように混ざった
セックスのように溶けあい、街を隅々まで把握し、そのかたさと、儚さを知った。
青い夜。星、月。
そこになかったそういうものに抱かれたかったのだと思う。
カフェで、充電器が落ちて、鳴る。
目がなかったから、
手を繋いで、
純粋も醜さもなく、
ただそのうまくいかない焦りや 抗いようのない快感 愛していると言うささやき
うまくいかないなりに丁寧に丁寧に愛撫した。
逸るのは無駄だと、
辛抱強く拒み、拒み、朝を待とうとした。
つまり、受け入れてくれた。
なんども射精するように、夜の闇は広がり、
ようやく落ち着いて、また
丁寧に愛撫を重ねた。
混ざり合い、
また、行為を体感して、
結局見えないくせに見えたふりをする。そうして生きている。
そういう矛盾が閉じた、どうしようもない空間に満たされたかった
世界一重要な、蜃気楼が見えた。
つまり、なりふりかまったのだ。混ざりたくて、
目さえないから、この街の空にはない、星に感じている、
息さえできないから、空を、晴れへ通しに、街灯へ、石を蹴るのだ
熱帯的ねちっこい太陽は大嫌いだし、
こんな人間的ねちっこい夜も大嫌いだが、
そのいずれかに、もしくは両方に 変化が通り過ぎていくのは、感じた。
まっしろな夜空が
星がないのに、と
空笑いと一緒に、街を闊歩する。
選出作品
作品 - 20190820_665_11403p
- [佳] 目さえない青 - いけだうし。 (2019-08)
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目さえない青
いけだうし。