気管支が人より狭くて
たばこを吸うたびに
のどのおくで波の音がきしむ、
いつの間にか
やわらかすぎる風の速度が
死ね死ね死ね死ね死ね、
みたいな空耳を残して
細い体をすり抜け
ドップラー効果みたいに
ずっと後ろの方で
みずいろの生き物に進化する
その風はきっと海からやってきたんで
ぼくはつい走りすぎてしまう
薄まっていたはずの傷が開く
巨大な昆虫の羽のようにゆっくりと開く
ふいに 過去の自分と
すれちがっていたような気がして
振り返ってみたがそこには何もなく
ぼくだけが 白々しい光のもとで
さざなみのように呼吸していた
選出作品
作品 - 20190726_205_11344p
- [佳] ぼくのずっと後ろの方で - 鈴木歯車 (2019-07)
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ぼくのずっと後ろの方で
鈴木歯車