選出作品

作品 - 20190603_221_11244p

  • [佳]  蛙男。 - 田中宏輔  (2019-06)

* 著作権は各著者に帰属します。無断転載禁止。


蛙男。

  田中宏輔



まるで痴呆のように
大口あけて天を見上げる男
できうる限り舌をのばして待っている
いつの日か
その舌の上に蝿がとまるのを
(とまればどうすんの)
蛙のように巻き取って食うんだ
(と)
その男
舌が乾いては引っ込め
喉をゴロゴロ鳴らす
そうして、しばしば
オエー、オエー
と言っては
痰を飲み込む
(ほんと、いくら見ても厭きないやつ)
訊けば、その男
蛙がごときものにできて
人間たるわしにできんことはなかろう
(とか)
言って
じっと待つのであった
(根性あるだろう、こいつ)
ぼくはそんな友だちをもってうれしい
ほんとにうれしい