選出作品

作品 - 20190529_134_11232p

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それしかないのだから

  帆場蔵人

おまえの手には
もう半ば潰れた
折鶴が死んでいた

そんな眼で見ないでくれ
だけど、告げなくては
いけないのだ、小さな手よ

おまえの手には死が、ぼくの
手にも死が織り込まれているのだと
あの煙りとなって空にとけていく
手にもそれは織り込まれていたのだ

鶴を、一羽、折ろう
陽が沈むまでに一緒に
鶴を、一羽、折ろう

半ば潰れた折鶴を、手に、祈ろう

すべ、ての
折鶴が
地に落ちる
終わりを
おまえが
信じて
いる
としても
鶴を折ろう