選出作品

作品 - 20190507_902_11204p

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夕焼け

  霜田明

   I

僕は五年前に9980円で買った自転車を漕いで
夕陽の沈み終わった宵の海の中を
きぃきぃ走って行く
遠くの図書館へ行くためだ
その姿が相対化されていく

   II

世界がひどく単純化されていく
僕が今日の割り当て分の欲望を
あの夕陽の中へ埋葬したからだ
今日はその単純化の中で生きる
明日は明日の欲望を生きるのだ

   III

ほら 僕は確かに身体だったじゃないか
人間同士の関係は
性関係に近づくほど本質的なんだ
(夕焼けは回帰以前にいまここに張り付いて離れない)
ほら 僕が未来の性関係の中へ消えていく