マルボロ吸って白中の寺
眺めれば南無妙法蓮華経
蓮も杓子も雪に埋もれる
この世が全くの闇ならば
濡れ積もる御堂はさぞ映えるだろうけど
きょうは杉山も空も
そしてそれらの前で久遠にのびている道路も
すべてが輝反射しているので
御霊は消えていく
冷気だけが硬く立ち
灰もお経も沈殿している
されど手元がほのかあつくなりはじめたころ
斎場の壁の黒さに目がいく
今日は友引だ
四年前に曾祖母のなきがらを轟々燃やした炉も
まばら生える杉山の中で黙し踞る
この寒さの中でも木々は呼吸している
煙は見えないまま
マルボロも尽き果てた
明日も雪は残っているだろうから
明日も寺は白く眩しいだろう
選出作品
作品 - 20190305_096_11105p
- [佳] 雪 2019 - 渡辺八畳@祝儀敷 (2019-03)
* 著作権は各著者に帰属します。無断転載禁止。
雪 2019
渡辺八畳@祝儀敷