──おいでなさい。よい星回りです。
(ゲーテ『ファウスト』第二部、相良守峯訳、罫線加筆)
畳の湿気った奥座敷、御仏壇を前にして、どっかと鎮座する巨大なイソギンチャク。
(座布団が回る、イソギンチャクが回る、互いに逆方向に回りはじめる)
──おいでなさい。よい星回りです。
(ゲーテ『ファウスト』第二部、相良守峯訳、罫線加筆)
イソギンチャクが呼吸をするたび、星々が吸い込まれ、星々が吐き出される。
(そのたびごとに、宇宙はこわれ、宇宙はつくられる。)
──おいでなさい。よい星回りです。
(ゲーテ『ファウスト』第二部、相良守峯訳、罫線加筆)
螺旋に射出された星々が超高速で回転する。
(刹那の星回り!)
星と星と星との饗宴。
鐘と鐘と鐘とが響きあう。
(ジョイス『ユリシーズ』9・スキュレーとカリュブディス、高松雄一訳)
(団栗橋だなんて、懐かしいわねえ
京阪電車も、以前は、地面の上を
走ってて。ほら、憶えてるでしょ
橋の袂を通るたび、桜の花びらが)
semaphore 腕木信号機。
(通過する急行電車!)
semaphore 腕木信号機。
(通過する急行電車!)
──もうどのくらい占星術に凝っているのかね?
(シェイクスピア『リア王』第一幕・第二場、大山俊一訳、罫線加筆)
(憶てるでしょ、ほら)
点滅する信号機!
さくら、
さくら、
点滅する信号機!
さくら、
さくら、
選出作品
作品 - 20190301_013_11095p
- [優] 陽の埋葬 - 田中宏輔 (2019-03)
* 著作権は各著者に帰属します。無断転載禁止。
陽の埋葬
田中宏輔