選出作品

作品 - 20190131_534_11032p

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●月〇日

  山人

 ●月×日、彼女らと会った日だった
まったくひどい日だった
俺のあらゆること、すべて拒否されたような日だった
従食の食事は特にまずく感じられ、異質な物体がただ喉を通るだけだった
古びたスキー場のホテルわきでは、中国人親子がわけの解らないことをしゃべっていた
なんでみんなそうなんだ
どこにも俺の存在なんてないじゃないか。心の中ではうつろにその言葉が響いていた
家に帰っても、目は冴え、ひどい動悸に襲われた。まるで眠れる気がしない
きっと血圧も高くなっていると思った

翌朝●月〇日、やはり血圧は高かった
ずっとここ何年も暖かい冬が続いたのに、その朝は冷えた
春先の放射冷却時ならまだしも、真冬のさなかにこれだけ冷えるのは最近では珍しい
普通なら、寒いな、そうつぶやくはずなのに口を動かす元気もなかった
できるのなら、このままどこかの世界へ逃亡し、消息不明になり
この世から消えてなくなりたかった
しかし、そんなことは許されるはずはない
逃げるのはいつでもできる、俺は戦うことを誓った
 その日、朝8時から戦いは始まった。果たして敵は居るのか、敵などいない
敵は自分の中の弱い心だけだった。俺は消え入るような弱さを無視した
一語一語、目を見開き、反応のない人・人・人の目を射るように見つめ、俺は訴えた
野豚のように丘を駆け、この老体を飛躍させた
いつのまにか、そこには俺と彼女たちだけとなった
戦いはまだ続ける必要性がある。俺は説いた
 まだ、季節は真冬だった。午後になると残照に近くなる
俺は彼女らを連れて山の頂へ向かった
これだけ膨大な純白の雪を見たことがない、その彼女らの急変はすさまじかった
俺はついに交わった、というよりも、彼女らが俺の体内に触手を伸ばし、俺を蹂躙していた
俺の魂と彼女らの魂が山の頂で融合している
俺は酔った。何も武器を持たない俺は勝ったのだった
 その日、白い峰々はかなしいほど鋭角で、青く澄んだ空と同化していた