選出作品

作品 - 20181213_243_10949p

  • [佳]  干し芋 - 松本義明  (2018-12)

* 著作権は各著者に帰属します。無断転載禁止。


干し芋

  松本義明

迎えにいく迎えにいく迎えにいかなければならないお口の中で待っているだけならば何も生まれないはじまらないこれみよがしにやってくる化学調味料にはありえないほんとうのほんとうの天然の微かな甘みがお口の中で自分の味覚と出会った瞬間に弾けたポロロン故郷の思い出の中に降る小さな手のひらに溶けるボタン雪の体温に染み渡るほんもの甘みはコンビニにないよ何故ならコンビニには過去を照らす灯りがないこれみよがしに私は唐揚げ私はおでん私は肉まん私はマロングラッセ私はアイスクリーム目をつむっていてもわかってしまう今の味は舌に突き刺さるあれは味ではない針のついた値札だ味覚を鈍らせる毒だだからもう貴女を迎えにいけない貴女を探せない私の味覚は晒した干し芋に空が喪失した記憶が山積みになっている遺伝子組み換えの海の素や種子法の改正わかりやすい味よりお口の中で素材と味覚が探しあいやっと出会えた小さな甘みが涙の中でなんどもなんども爆発しているから思い出しているけれどもう貴女に出逢えない