名前の代わりに発話するねえに振りかえる
きみの長い髪は粗い日差しに透けて
その方角へ背景を忘れたこと 気付くずっとまえから
何度も書き損ねるさようならは空目した名前
ぼくがきみの恋人になれたか分からないまま手をつないでも
きみはぼくをきみと呼び
踏み切りのむこう平凡な交差点に海を探している
夕立の代わりに降るあられがきみの頬で跳ね
折り畳み傘はゆるやかにひらいた
ひかりの粗さを測るてにをはをまぼろしにかざして もう
帰ろうと逆向きの車窓を選ぶ
大阪湾しか知らない細い目は途切れ途切れに幼く
ほとんどすべての景色を忘れた
夕暮れの形式に残るのは固有名詞だから
揺れるね ねむりに落ちる直前の
絡まるほど長い髪の渦まき
おやすみなさいを言い損ねてささやくありがとうも空耳
形式に意味を探すきみは夢のなかでも
ぼくをきみと呼ぶのか まぼろしの遮断機をくぐる
選出作品
作品 - 20181105_969_10870p
- [優] unconfessed - 完備 (2018-11)
* 著作権は各著者に帰属します。無断転載禁止。
unconfessed
完備