虹彩へ降りしきる抽象的な雪が十分に積もるまで
待つつもりだ それからふたりで
と 発語した瞬間に失われる名前と名前
画面ですぐ融ける雪から涙を
区別すること ふたりの指の表面で
こごえる電子の行方を見つめ
見つめて 伸びゆく神経はいびつな線路となり
ふたりはふたりぶんの切符を買う
切符という響きを理由のすべてとして
駅の名前 窓枠を透ける腕
荒れた手ですくう雪 切れた指でつむ花
ふたりの近眼へ降りしきるあらゆるまぼろしを
詳細に描きとめる画用紙 それすらもまぼろし
名前の隙間に涙まじる語りも過つ指輪
外し方は永遠に忘れたままとしても
冬だねと 発話した瞬間に来年の雪が見えるから
ふたりはラブソングを歌おうと何度も
何度でも まぼろしの喉にふれる
選出作品
作品 - 20181029_311_10847p
- [優] ill-defined - 完備 (2018-10)
* 著作権は各著者に帰属します。無断転載禁止。
ill-defined
完備