選出作品

作品 - 20180306_438_10297p

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わらいの口

  あおい

首筋がわらう、
背中がわらう、
指先がわらう、
わらいごえがうるさくて
今夜も眠れない

わらいごえから意識をずらすと
今度は空間がわらう
空間には顔のない顔がある
顔のない顔は目のない目を
口のない口を開いたり閉じたりしている

顔のない顔の
口のない口から
赤い舌が伸びる
赤い舌は地面を這って
自分と同じ息吹を探す

髪の毛がわらう、
身体中がわらう、
私のなかの世界のわらいが
ガラス窓を突き破って
いくつもの爪になって地に傷をつける

傷をつけられた地は
雨を滲ませるまもなく
からからとわらいだす
いつのまにか地は
わらいの口のなかにある

わらいの口は傷だらけで
赤い血を滴らせながら
自分の背中を這って歩く
わらいの口の足跡が残した
卵が孵化してわらいがうまれる