選出作品

作品 - 20180122_930_10191p

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沈黙のための音楽

  

空は薄墨で塗り込められて
天使たちは地上へ降りられない
心ない言葉を投げつけられた魚が
砂浜に打ち上げられている
大切な誰かと歩いていたはずなのに
気がつけば足跡だけが残っていた

●何もかもが嘘ばかり
●きっと
●波の音だけが真実だ

言葉を話す小鳥を探している
遠い昔に
籠から逃げてしまった
そのままにしておけば
世界の寿命も延びるのに
人は愚かだ
しかし
だからこそ愛おしいのだ
そう囁く声を
確かに聞いた

●愛するということを
●愛される前に
●学ぶ術はないのだろうか

光の降る草原を
灰色の犬が走っている
彼は狼を追っているのだ
遠い昔に
その役割のためだけに
人が創った種族
でも
狼はもういない
そして
走り続ける彼は
寂しさを知らない

●目覚まし時計の音が
●ニュースキャスターの声が
●車のクラクションが
●地下鉄のブレーキ音が
●光の渦となって
●聖堂に満ちあふれている


ベーコンの匂いの中で
牛乳瓶に挿された百合が
決して解けない数式を受胎した