選出作品

作品 - 20171127_572_10047p

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想像の遠近法

  鷹枕可

真鍮把手に無窮階段を
ベルの花籠が婦像を糊付けるまで

浮腫腫瘍に紛れる
麻酔医達の精神指針は
廃墟構内精神病院に
紙の城砦を焼く
絨緞由来の扁桃人物達が
盲目の乳房を
黒檀簡柩に花被-被殻の様に創物と看做す
それは陰鬱の縮膨現象、
心臓腑界の輸液翰壜であるインク
車轍であり門扉の柵でもある
白薔薇の徽章
靴底を蹂躙攪拌鏡より
分身へ

陰の天球体グラス白熱燈より
偶像機構
投影装置より鳴響する
蝶翅鱗粉時計の
城と月蝕遠近法に
絶無具象体たるわたしがいる

酸い橄欖
或は書簡の鳩尾
蒐集家の靴跡が去る様に
永続命数速度計は
加速してゆく
純血主義の終焉までを

酪乳色へ紐解かれた
塑像幌と静物瓶の
遅遅と、そして硬い鉛球は
融錫鍋からなる近代機械翻訳機つまり
習慣的彌撒の亡霊であって
宮殿画そしてその建築家達を
爾後刻の散逸期に
猖獗女鳥『ハルピュイア』が
鉤裂の帆を
離れて散ったグラス白熱燈に燃える薔薇へ孵す

それは絶鳴の音叉ではない