選出作品

作品 - 20171002_378_9923p

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Corpus/Grain Side Version。

  田中宏輔



波音を聞いて、
(ヘンリー・ミラー『暗い春』夜の世界へ……、吉田健一訳)

足元を振り返った。
(マーク・ヘルプリン『シュロイダーシュビッツェ』斎藤英治訳)

僕が見たものは、
(ラディゲ『肉体の悪魔』新庄嘉章訳)

四角く切り取られた
(トム・レオポルド『誰かが歌っていう』29、岸本佐知子訳)

海だった。
(ジュマーク・ハイウォーター『アンパオ』第二章、金原瑞人訳)

四角い海は
(ステファニー・ヴォーン『スイート・トーク』大久保 寛訳)

見るまに
(ロジャー・ゼラズニイ『ドリームマスター』2、浅倉久志訳)

大きく
(トム・レオポルド『君がそこにいるように』土曜日、岸本佐知子訳)

部屋いっぱいに
(スティーヴ・エリクソン『黒い時計の旅』68、柴田元幸訳)

ひろがっていった。
(フォークナー『赤い葉』4、龍口直太郎訳)

小さな花がひとつ、
(スーザン・マイノット『セシュ島にて』森田義信訳)

さざ波といっしょにぼくのほうへ漂ってきた。
(ギュンター・グラス『猫と鼠』VIII、高本研一訳)

まるで海のように青い
(日影丈吉『崩壊』三)

濃い青。
(ピーター・ディッキンソン『エヴァが目ざめるとき』第一部、唐沢則幸訳)

僕の見たことのない花だった。
(リルケ『マルテの手記』第一部、大山定一訳)

目の前につまみ上げて
(トム・レオポルド『誰かが歌っていう』5、岸本佐知子訳)

近くで見ると、
(スーザン・マイノット『セシュ島にて』森田義信訳)

その瞬間、
(志賀直哉『濁った頭』三)

一波(ひとなみ)かぶって
(泉 鏡花『化鳥』十)

はっと目をさました。
(リルケ『マルテの手記』第一部、大山定一訳)

すぐ後ろから声をかけられたのだ。
(リルケ『マルテの手記』第一部、大山定一訳)

妹が
(志賀直哉『児を盗む話』)

ハンカチをさし出した。
(ハイゼ『片意地娘(ララビアータ)』関 泰祐訳)

なんだい?
(キャロル『鏡の国のアリス』7、高杉一郎訳)

思い出せない?
(ロジャー・ゼラズニイ『ドリームマスター』4、浅倉久志訳)

どうかしたのかい?
(ジュリアス・レスター『すばらしいバスケットボール』第二部・2、石井清子訳)

思い出せないのね?
(カフカ『城』20、原田義人訳)

わからないよ。
(トム・レオポルド『誰かが歌っていう』3、岸本佐知子訳)

覚えてないんだ。
(サリンジャー『ライ麦畑でつかまえて』25、野崎 孝訳、句点加筆)

子供たちが並んでバスを待っていた。
(スーザン・マイノット『シティ・ナイト』森田義信訳)

どうしても解けないのよ、
(トーマス・マン『ブッデンブローク家の人びと』第二部・第七章、望月市恵訳)

うん?
(スタインベック『二十日鼠と人間』三、杉木 喬訳)

バス・ステーションから一台のバスがゆっくり這うようにして出てきた。
(ゴールディング『蠅の王』10・ほら貝と眼鏡、平井正穂訳)

そうだ、思い出した。
(ロジャー・ゼラズニイ『ドリームマスター』4、浅倉久志訳)

ふと、
(谷崎潤一郎『産辱の幻想』)

思い出したよ。
(ロジャー・ゼラズニイ『ドリームマスター』4、浅倉久志訳)

青い
(トム・レオポルド『誰かが歌っていう』20、岸本佐知子訳)

花が真ん中に描かれている
(リルケ『マルテの手記』第一部、大山定一訳)

白いハンカチ
(川端康成『山の音』島の夢・二)

そのハンカチを
(ハイゼ『片意地娘(ララビアータ)』関 泰祐訳)

ぼくは
(バーバラ・ワースバ『急いで歩け、ゆっくり走れ』吉野美恵子訳)

結んだことがあった。
(グレイス・ペイリー『サミュエル』村上春樹訳)

いまもそのままかい?
(ギュンター・グラス『猫と鼠』II、高本研一訳)

妹は
(カフカ『村の医者』村の医者、本野亮一訳)

死んで生れた
(志賀直哉『母の死と新しい母』七)

袋児であつた。
(川端康成『禽獣』)

見ると、
(スタインベック『贈り物』西川正身訳)

結び目はそのままだった。
(ピーター・ディッキンソン『エヴァが目ざめるとき』第二部、唐沢則幸訳)

そら。
(トーマス・マン『ブッデンブローク家の人びと』第二部・第二章、望月市恵訳)

これでいいかい?
(ヘミングウェイ『われらの時代に』第四章・三日間のあらし、宮本陽吉訳)

ぼくは
(サルトル『一指導者の幼年時代』中村真一郎訳)

ハンカチを解(ほど)いて
(ヘミングウェイ『われらの時代に』第一章・インディアン村、宮本陽吉訳)

妹に
(夏目漱石『三四郎』三)

渡した。
(志賀直哉『母の死と新しい母』六)

バスが待っていた。
(ジャン=フィリップ・トゥーサン『浴室』直角三角形の斜辺、野崎 歓訳)

僕は
(リルケ『マルテの手記』第一部、大山定一訳)

妹と一緒(いつしょ)に
(シェイクスピア『ハムレット』第五幕・第二場、大山俊一訳)

バスに乗った。
(日影丈吉『緋文』一)

バスは
(ロラン・バルト『恋愛のディスクール・断章』不在、三好郁朗訳)

音を立てて
(ロジャー・ゼラズニイ『ドリームマスター』4、浅倉久志訳)

動き出した。
(ヘミングウェイ『われらの時代に』第一章・インディアン村、宮本陽吉訳)

妹が
(志賀直哉『児を盗む話』)

ページを繰り
(ジイド『贋金つかい』第二部・二、川口 篤訳)

父の真似(まね)をして
(エレンブルグ『コンミューン戦士のパイプ』泉 三太郎訳)

詩のように
(シャーウッド・アンダスン『南部で逢った人』橋本福夫訳)

聖書の言葉を
(カポーティ『草の竪琴』5、大澤 薫訳)

呟(つぶや)き
(芥川龍之介『報恩記』)

はじめた。
(ジイド『贋金つかい』第二部・二、川口 篤訳)

僕は
(リルケ『マルテの手記』第一部、大山定一訳)

視線をそらして
(ゴールディング『ピンチャー・マーティン』14、井出弘之訳)

窓の外を眺めやった。
(サリンジャー『大工よ、屋根の梁を高く上げよ』野崎 孝訳)