とめどころも無い広さを飽く梳られた電気の広場を理髪鋏の葬列が寄掛かってゆくには些かのパン屑が必要であった
握り締められた手の容が最初の偶像となるだろうが憎しみの愛は始まったばかりなのだ
貿易便覧を眺めて見れば噴水と鳩時計の近寄り難い距離は明瞭な物となるであろう
何よりもまず掴まれた昏い花の手指がシチュー鍋の乾板に沈みこむまでに遣り遂げなければならないことは鉛色の銃、
それを握りしめた大広場の白昼の彫像、ただならぬ微笑にさえもガラス瓶の独立記念日がドアをノックする様に、物象は丁重に退廷をしてゆかなければならない
証人台に録音機のヴィーナスよりも見苦しい踵が逆様に曇る愚者の万有引力を提唱すると、
電気科学者たちは鼠の血や鸚哥の翼を納めた私書箱を発端とする記録的な更新世の死体を流行病隔離室に匿う
葡萄地方の鈍らな愉悦に劇場を築く程に閑散として笑った幾つもの骸骨のただなかで
踏みしめられた胸像の微笑が堰を切って放心して行く今と今にも地下鉄にも檸檬が輪転している半自動裁縫機の正確な縫目を掻い潜りながら
誰もが血糊を避けて歩く
過去に於いて想像をされた機械と現代像に於いて展望をされる機械工学の間隙を諸々の抗精神病薬は眠りながら立っている夢遊擬似症の偽婦人たちに跪く外に手筈もなく
収監者達であり私達でもあるべき所の独房の丸時計に釘打たれた麦の抜殻を熟れた病人が腐り始める、錫の薬莢に拍車はかかりながら
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めざめよ夜のはじまりから喘息に到るまでの幾つものキャベツロールに添えられた釣鐘の叛教会主義者たち、
自動車から瓦斯燈へ回顧展から処女受胎へつぎつぎと傾れ喚く貨物帆船乗客たちよ
今は許そう、非-面体の三角法が採掘される迄には充分な時間が在るから しかし福音機械書記者の想像限界は人間達の咽喉の林檎よりも静物に近いようだ
私は一つでも取りこぼしたことが有っただろうか、総ての名前を記す指には終世の光悦が約束されているが鍵盤が落ちた部屋には閂が降ろされるだろう
君の部屋にも閂が降ろされるであろう、それは青空の壁紙を延びる積乱雲の遅い聖霊達の刎ねられた心臓でもあるかもしれない
収穫は悪魔であり白薔薇色の石鹸でもある、それは叶わない戸籍録のひとしずくの泪ではない、見て御覧、ミニチュアの市街地を塩の柱が振返るところを
不安症の部屋部屋は妊娠された、堕胎の少年ははたして雌蘂か雄蘂なのか、
両性具有の海を拾うひとびとが呪いを受けるとしてもそれは近代と現在ほどの些末な違いに過ぎないのだから、
つぎつぎと埋葬された遺骸骨の壺が掘返されたところで何ら恐れるべきではないのだ
たとえるなら死が総てに降りかかることをあらかじめ決められた始めての手紙でもあるように
選出作品
作品 - 20170911_190_9900p
- [佳] 教会地 - 鷹枕可 (2017-09)
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教会地
鷹枕可