頬を打って、
小径から冷めた霧が、
遠ざかる、
みそひともじの歌声は、倫理の、
呼びかけと
はらからのうらぎり
うつくしい児や、
《まなざしの》
うらめしい児や、
《まなざしも》
みてぐらとともにおまえの日の戯れも、
火のなかへ焚べてしまえ、
藤袴。
石はかの女を見てる
嵯峨野の官吏から
安積の沼地。
ひとの燃える温度
薪をわる手斧は
もはや薪をわるだけでは済まされない
古帽のなかへ顔を匿い、
地唄で土を這う
雨だ、
ふるき吉野の苜蓿
またしても経験へと降りしきる、
雨だ、
きみはきみを殺す
どうしてそんなことに
《まなざしの》
どうしてそんなことで
《まなざしを》
あなたは海を見てる
サハラの兎唇も
芦鶴の逢坂も
それからずっと枯槁
それからずっと枯槁
選出作品
作品 - 20170615_957_9690p
- [優] 枯槁 - 中田満帆 (2017-06)
* 著作権は各著者に帰属します。無断転載禁止。
枯槁
中田満帆