ワイングラスが女の乳房のようで
その端から滴り落ちる光は
すべての記憶を消し去りたい大人達の
甘い手引きとなり追憶を包む
口約束が成就する頃には
もう夜が明けきるから
互いの腕を縛ってしまおうか
静まり返った夜の教会に
咎を請いに赴こう
誰がいなくても
いて下さる人のため
私達は懺悔する
罪を改めないことの令状を
発熱する肌の囚人となって奥へと入り込む
夜の茂みの葉擦れの慰撫
器はやがて溢れ出るもの
それすら気付かず満たし続けて
濡れそぼるなら
肌はやがて痣となり刻印を刻むのだろう
裸ははもう生まれたままの姿ではなく
包まれることで はじめて泣き声をあやすことが出来る
あなたは何時何処で現うつつに返りますか
一秒たりとも忘れたことのない
不規則な呼吸の生まれゆく源で
私は門を叩き続ける
夜が明けるまでずっと
こぶしが血で滲んだら
どうぞ杯を傾けて下さい
蹂躙をいとわない無垢を孕んで
その高潔と惰性の諸刃の思惟に
捧げられない乳がこぼれるまま
不可避の抱擁で私の母性を証明するあなたが
やがてグラスを空にしてしまうその日まで
選出作品
作品 - 20170516_957_9618p
- [佳] 黙秘の選択 - AKIHO (2017-05)
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黙秘の選択
AKIHO