ハンバーガーショップとかほんとムリ。食べてる姿なんてしんでも誰にも見られたくない
し。今だって周りのやつら全員しんでほしくって。なんてことをつぶやいたら結構みんな
そう思ってて、そりゃちょっとはうれしかったけど、でも。したらどっかの誰かが「じゃ
あ今すぐ開戦しようぜ」って。誰もが、そんな気がしていただけなのかも。
どうせわたしまたガラスウィンドウ越しに思考している。けっきょくなんのために手づか
みなのかも分からないまま、ハッピーセットのおまけにもならない、わりと痛めのプラス
ティック弾を飛ばす銃を握りしめて、隙だらけなバンズにもたれて、いますぐにでも床に
落ちそうな体勢で、どれだけこんな格好してればいいんだろうって、ときどきは思うんだ
けど。そういや、気分の乗らない日なんかは「それなんの肉?」ってはぐらかして口も付
けてやんなかったな。ナニサマなんだか。ずっとお客様だったのかな。気が付くと――
辺り一帯とっくにペイント弾で染めあげられていて、しかもそれがわたしのたまたま着て
いたブサイクな服なんかよりずっと綺麗な蛍光色をしているものだから、もう、どうした
って当たりたくない。
タバコ臭い三階の窓際席から歩道を見下ろしているデブの上官が、チキンを振り回しなが
らものすごい怒声をあげてるのけっこうエス。そういやわたしこの前めちゃくちゃかっこ
いい傘買ったんだけど、それで叩いてくんないかな。食らってしばらくは無敵だってさ。
ドンキで買ったっぽい軍服をノリノリで着こなすおとこのこたち、あれさ、手持ちの火薬
に命令よりほんのちょっと少なめにお湯をかけて「平和をつくってます!」だとか言って
そうでウケるね。撮っておきだったのにもう穴だらけのストロベリーショートケーキセレ
ナーデ。それっぽいだけな3分間の黙祷。ごめんね。わかりやすい物しか口にできない。
誰もしなないうた。どうしようもない転調。聞いたこともないお店のポップコーンが美味
しいのになんかびっくり。かわいめのおんなのこたちの「救助要請」を映したアイフォン
の薄光で目を焼いて、盲目の振りをしながらモニターにキスする性癖。どうしよう(もな
い)わたし。たった60デニールで生き残れるのかな。(さいごの声なんてまだ誰にもあ
げたくないのに)
インカメでさっとメイクを直して顔を上げる、飛び交う視線にあてられても手を挙げてし
まわないように。そして周りをゆっくりと見渡し、とりわけレートの低そうなおとこのこ
たちを選んで、わざとらしく目をやった。(しんじあえ) ……したらそいつら、足下に散
らばったBB弾を指さして、ちょっと得意げに「それ1、2年で土に還るんだぜ」って、
ばーか。わたしもうただの一秒だって待ってらんない。
あ、ところでいま気づいたんだけど、上官の振り回すチキンの部位がなんかピースサイン
みたいな形してんの、あれかっこよくない? イエイ。
選出作品
作品 - 20161031_162_9215p
- [佳] ファストフードファイター - こざかな (2016-10)
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ファストフードファイター
こざかな