選出作品

作品 - 20160526_011_8847p

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ドレスコードを闊歩する巨鳥の為の広告塔

  鷹枕可

嵐を呼吸する曇窓に
水滴を溶闇を吸う試薬試験紙が赤黒く偏移し
血塊の禽達は
各々の多翼風車塔に砕け散った
尊厳を謳う革命家はやはり自己の尊厳死から遁れ得ない
私書箱と云う居留地を逸し
閲覧者勿き
種々の幽霊実験室の
古典物理学的現象は橄欖の歌よりも
現実に於ける放縦な奇跡を偏重し
見よ、
始祖の数奇ならぬ浮薄
流亡の一群は
地球黎明の熔鉱炉より受胎された骨格の終極である

抑留者の遺骸は
紙幣の花よりも
増幅し積層する罪科を誇張する
窮めて相似をする露悪の執行人
そして楕円鏡の代理人
籾殻の言葉が
人物像の起源以後を縁取る
機械時計が真鍮修飾からなる供物であるならば
旱魃の季節は悪辣であるが如くに
飢餓の市外地を静かに静物の死へと画き続けた

斜塔を呑む影
穹窿に聯続する卵殻
掌握の瑕疵を受け
地下隧道の白熱電球は釣鐘草の結露
雪花石膏を開く納骨室の精緻、潔白は
盲人に
恢癒無き時間を刻一刻と宣告し
昏迷を鳴り亙る受話器には独身者の濁声が渦巻き
睡眠者の晩年は
純粋なる悪趣味としての記述を諾うだろう

酸い芍薬
そして
深海を驕り綻ぶ百合を以て
積乱する蜘蛛の雲窓を採取せんとする
博物学者がつぶさにも観察鏡を宛がう瞭然の門は
且て衰亡を逸り馳せた競翔鳩の書簡に
殲滅爾後の霰の干潟と
鳥篭と乾燥花の断絶を
まるで幼時洗礼への復讐者の様に嵌め殺した

想像の死と存続の血が総て均しくなり
引力圏を慣性運動をする鉛球には
一把の誤謬としての薔薇の指が
死後生の虚飾と苦い死の行進を記帖していた

各々の命運を硬く憶えよ

それらは瞬間と永続を分ち隔絶する鏡像であり
間歇的な叫喚は
人体機関と咽喉を響き亙る
鍾乳窟修道院の容貌勿き修道尼の白昼夢でしかないだろう
電気機関と磁気嵐、
自働の機械
死に追随する幾多の暴風よ
悲願の拠地へと帆立殻を吊るし
越境せよ