枝から飛び立つ鳥の腹を見たら、何か感じ入るものがあった。
それから動物園に行って、プールでくるくる回りながら泳ぐビーバーの腹も見た。ちゃんと見た。鳥を見た次の日か、その次の日。
生きている血と肉の動くときのその生臭い重さがね。どうも。
僕は鳥とビーバーを生きながらにして、丸呑みにしたのだった。
だから行き会う誰とも口をきけず、目を合わすこともできない。
いやだな。
いやだな。
「あたしなんか、ほんとは変態だよ」
と今年四十三になる南敬子さんが落ちこむ僕に言ってくれたのを思い出した。
ありがとう敬子さん、僕は一生あなたのことを忘れない。
それでも、いやなものは。
いや。
敬子さん、ええとうまく言えないけど世界は暗黒だ。
お腹の中の蛇の中の鳥とビーバー。
腹黒い、ってよりも腹暗黒だよ。
こし暗とつぶ暗
インドの古代哲学をもってしても、暗黒はこの二様にしか分類されないんだって。
選出作品
作品 - 20160312_158_8685p
- [優] 驚くべきこと - Migikata (2016-03)
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驚くべきこと
Migikata