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作品 - 20160311_148_8682p

  • [佳]  浮力 - planeta  (2016-03)

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浮力

  planeta

誰もいない午後にむかってあるきだそう
どこで寝ていたのかコンクリートの粉が服についている
つまんで、渡せるだけの風を待つが、来ない
つまんで差し出したまま佇んでいる
かげが落ちている、ひどく薄く、昼間の遊具が
かげのうすい子供たちのかげ
だれのものでもない人間たちのかげが
霊魂をうしなってぼうっと佇んでいる
中央公園は広い墓地だ、砂場も滑り台もある
揺れるものは不吉だからない
わたしは立って、糊付けされたままあるかなくてはならない
まっすぐあるきだそう
靴底を頬にすりかえたみたいに
崖から滲んで消えてゆくひとかげが恐ろしくって
あのブランコの根元に、うつくしい心中があったという
苗をふみかためるように、たくさんの葉がかさなる待ち合わせ方
目をほそめなくても何もかもが穴だらけに見えるのだ
目いっぱいひろげた口のようにいびつなふるえる穴で
顔にかえられる頭巾のすれるようなおもさをやりすごしては
足を悪くしながら着実に幼児へともどってゆく
葉脈に直接ふれながらあるくと空気中の穴にふれる
膿をだしながらつぶれてわたしの手がさらさらになる
砂を撫ぜるように子供のあたまを撫ぜていたのか
子供のように誰のものでもない砂を撫ぜるか
溜まる肺がつつましい