日、朝と夜が変わるとき、こころをひとつ折る。たとえば、それが紙のようなものだとすれば、日を重ねて折っていくうちに、きっと鶴にも亀にもなれるのだ。そうしてあなたはそれに乗って、天空の城にも、竜宮城にも行ける。だから、そんなに頑張らなくてもよい。ただひとつ、丁寧に折り目をつけるのだ。
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あなたのこころの折り目は、寝る暇もなく忙しくて、少しズレて折れたりしていた。だからそれをもう一度広げて、丁寧に伸ばして、再びきちんと折ってあげる。そんな気持ちになれるような言葉があればいいし、そんな気分になれるような歌を探している。今日書けなかった歌詞は、明日きっと神様がプレゼントしてくれるのだ。
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誰も乗せることなく、病室には千羽鶴が飾られていた。その代わり、空港の近くの病院だったので、窓辺からはたくさんの離陸していく飛行機が見えた。ほんとうはそれに乗って、世界中を見に行けたら良かったのだけれど、あなたの子どもの病気は他の子どもよりも何だか難しくて、長く眠りすぎたベッドのシーツはしわくちゃだった。わたしはそれをほんの少しだけ伸ばして、ひたすらに祈ることしかできなかった。
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あなたは、あなたの子どもにたくさん謝ってきた。そして、折らなくていいところまでたくさん折って、最終的にこころはぐしゃぐしゃになっていた。神様、今夜は悲しみにくれるあなたのために、あなたが気がつくまで流れ星を何個も流してあげて下さい。そして何でもいいから、お願いごとを聞いてあげてください。そう祈りながら、鶴をひとつ折って、また千羽鶴を作り始めた。
選出作品
作品 - 20151212_608_8496p
- [優] 折ること、祈ること - 熊谷 (2015-12)
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折ること、祈ること
熊谷