月夜空を翳る雲
草原のなかをひた走る
月夜の午前3時、網目模様のモアレが部屋に白夜のように影を落としながら夜が静かに沈んでいく
眩しすぎるくらいせせら笑いをする背中をひっくり返し、ひとり、畳と雲とを天井の間に射し込む光に寝そべっていた、午前中3時。しけたモクのむくろのお腹に両手に組み
旅がトラベルでツーリズムでオデセウスでトリプルでジャーニでいつもいつもいつまでも空中のチャリンコの帰社に散歩聴きながら
丸目の夜道にたたずんだあ高校生、夜の講堂の壇上にはいつも彼の首吊りがよみがえる
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道を見つめながら精神を羽交い締めにする4つ隅の画枠を嵌め込んだ色と容姿の伽藍の壁から眼前と襲いかかる威厳の仏心が無言のまま私を睨み見据えていた
下の口をすぼませながら蒼白のお面が滴し込まれた具象の絵の具、お汁の膠はバラバラとひび割れ、ざらざらと情象のかたまりばかりが剥がれ落ちていったベンガラは確かに私のものだった
ふと目覚めるとここにあるものぜんぶあげるからと手に差し出すすべてのものは灰と風に散った
すさむ体に少し怯えた小鳥が電話内で口をあけた、艶消しのネオグリーンのスプレーが窓の外を明るくしていた、朝が塗り替えられていたのだと同時にたった一度きりの蝉の嗚咽がいつもの朝を迎えた、たった一度の私の朝を一度に迎えてくれた
何もかもが一度にやってきたのだ
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弾けば雨が路を叩いた
歯を咬みながら、コンビニ戸口で、傘をすぼませ
いっぱし暖簾で、置きっぱの傘差し、があった
頬に冷たい柄を押しあて、、歩いていた、、、雨風のリズミカルな足、、と耳と電磁の明かり窓、、、三つ目の側面を振り分けて、後ろを振り向くとそこには誰しも一度は握る背徳の反旗が翻っていた
妄想を恐らく知に変え
知を恐らく想像に変え
想像を恐らくイマに変え
実に変え、実を恐らく
ほうとあほうと
あ
胡蝶蘭の夢物化
を
書けないものかと、私ひとしきり手袋の中から出てきたひとつの自転車や、帽子。巻き取られたフイルムや、腐った作業着や、殴り書きノートや、ゴッホの手紙や、ポケットの煙草
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なまくらな俺の雨に斗よは無く、無口なのか、面黒い空よりあけて電柱が傾いていた夜の夜明け、雷の恵みを神が音に聞いた
なまくさい蝉の哭くにほひに任せ蔦の這う女の背鰭胸鰭がのたうちまわる森のなかを駆け巡った
雨のフロント硝子に青く残る君の声と面影は背なかのストリームのクラクション
タバコを吹かし京都460
前車輪のクラッチつなげ
母親が工場の立つ煙突からこぎ出す自転車に子を乗せて
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ボブディランがイヤホーンから流れた、彼の歌声は静電気で痺れまくっるくらい肘てつをくらわせるくらい雨降るよう耳に流れ落ちる
ジャックナイフの鋒頭に冷たく凍るアイスの溶ける夏の、ハープのブォンフォノンのオープンキィを合わせドライブシートを寝かせながら、ウィンカーを左右に振らせている車はUターンできぬまま、彼の片桐ユズル訳詩集を探しても僕の本棚に消えていた。親に電話した。
あぁ蛙の夜泣きの声に滑り込むように膨らんだ彼のハープ音と嗄れた喉声がアップダウンしていた
*
至極せせこましい眺めではないか
腕のついた両足のぬかが
入れ替わり立ち替わり
音のない地面を揺らしながら走りだす
アーケードを走るな
なまやさしいフラグのネオンが点いては消えていく
囲われた三面鏡を眺めては飛びつく井の蛙が跳ねている
方法を得ずして、卑近の群れの客人はつまらぬものは切って捨ててしまえばいい
名前を消して歩いていればいいのだ
確かに道はあるのだ
閉ざされた門の
屋敷ばかりが建ち並ぶ
アーケードの友禅西陣の街界隈を、ひとり
静かに自転車をこぎ
嘘八百屋の店さきに
ばか高いゴボウや茄子
やハッサクやら
まぶしすぎるくらい
人参や野菜が
照明にならんでいる
選出作品
作品 - 20151007_400_8361p
- [優] 道草 - GENKOU (2015-10)
* 著作権は各著者に帰属します。無断転載禁止。
道草
GENKOU