夕飯の後 ヒートから白い錠剤を二つ取り出し
グラスに注いだ水で飲み下す
パーソナルコンピューターから
現代フォーク・ロック・シンガーの
煙草でがさついた声
慢性的アカシジアで椅子に座れないので
ベッドに転がっていると
被害妄想に満ちたショート・メールが
携帯電話に溢れている
この暮しを気に入っているのか
もうこう在るしかないのか
苔のつかない石の転がり方
何度教えて貰っても出来ない敬語の話し方
ずっと寂しかったので
もう寂しいとはどういうことかわからない
感情のない虫は殺される
耳近くを蚊が飛んでもシガレットの火が大事
同じことをくりかえすことはできる
シガレットに火を点けてすうこと
欠けたこころをタールが埋めていく
楽しいことはこの世に少ない
笑うことが馬鹿にすることなら
この世に向いていないな、と思いながら
バースデイを重ねてきたけど
死に近づいて祝ってくれるならば
望むところ
ノンアルコールのミント・カクテル ひとりのバースデイ
雨が降っている
保母さんの前で
シールの貼られた鍵盤を押さえる
今も楽譜は読めないけれど
生き方は本能が知っている
苔のつかない石の転がり方
何度教えて貰っても出来ない敬語の話し方
選出作品
作品 - 20150730_595_8216p
- [佳] スタディ・ローリン - エス (2015-07)
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スタディ・ローリン
エス