散る散る
ひとつふたつと
桃色花びら
ふたつみつ
風と手を取り
みつよっつ
樹洞がぽっかり口を開け
春がくるくる落ちるのを
老いて静かに眺めてる
大地を突き破っては
また還ってゆく
命の往来を眺めてる
楽しそうに(あるいは哀しそうに)
暮れてゆく人間どもの
空に広がる
なんぜんなんまんの
桜しぐれ
いつまでも咲いていてほしいから
いつまでも咲いてはいられない
腫れた乳房の少女が
いそいそと化粧を落としている
ほの暗い病室の静寂にも
夜に輝く街の喧騒にも
さくらは同じにやさしくなる
散って散って散り抜いて
あわやこの国まるごと
桜色
選出作品
作品 - 20150414_560_8021p
- [佳] 夢見草 - 蛍狐 (2015-04)
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夢見草
蛍狐