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作品 - 20150406_221_7997p

  • [優]  DESIRE。 - 田中宏輔  (2015-04)

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DESIRE。

  田中宏輔



DESIRE。


高級官僚になれますように
七夕の短冊に、そんな願い事が書かれてあった。
デパートの飾り付け。
ユーモアあるわね。
それともユーモアじゃなかったのかしら?
ひばリンゴ。
ひばりとリンゴをかけ合わせたの。
ひばリンゴが木から落ちる。
ピピピッと羽うごかして
枝の上に戻る。
字がじいさん。
自我持参。
あっくんといると、疲れないよとシンちゃんが言う。
よく言われるよと、ぼく。
「あっくんてさあ、誰でもないんだよね。」
「どゆこと、それ?」
「いや、ほんと、誰でもないんだよね。
 だから、いっしょにいても、疲れないんだよ。」
「なんだか、悲しいわ。」と、ぼく。
「東梅田ローズ」っていうゲイ専門のポルノ映画館で出会ったモヒカン青年の話。
温泉も発展場になるねんで。
夜中の温泉って、けっこうできるんや。
って。
知らなかったわ、わたし、ブヒッ。
セッケン箱で指を切断。
ぼくの血のつながっていない祖母の話。
パパがもらい子だったから。
で、その祖母のお兄さんのお話。
そのお兄さん、妹を朝鮮に売り飛ばしたって話だけど
それはまた別の話。
で、
そのお兄さん、自分の売り飛ばした妹が
売り飛ばす前に、間男したらしいんだけど
その間男した男の指を風呂場で切り落としたんだって。
男の指の上にアルミでできたセッケン箱のフタを置いて
ガツンッて踵で踏みつけたんだって。
アハッ。
近鉄電車に乗ってたら
急行待ちの時間で停車してたんだけど
その急行待ちしてますって
車掌が、アナウンスしたあと
ふうーって溜め息をついた。
おかしいから、笑ったんだけど
まわりが、ひとりも笑ってなかったので
ぼくはバツが悪くて、笑い顔がくしゃんとなった。
その日の授業が二時間目からだったから
中途半端な時間で、まばらな乗客のほとんどが居眠りしてた。
ひとりだけで笑うのって、むずかしいのね。
ぼんやり歩いていると
ときどき、ぼくは、ぼくに出会う。
ときには、二人や三人ものぼくに出会うこともある。
きっと、いつか、ぼくでいっぱいになる。
みんな、ぼくになる。
まあ、ついでに言うと、ナンナラーなんだけど
世界人類が、みな平和でありますように!