一本の棒を箸と決めたとき、そこからこぼれ落ちたものも、水道の蛇口からの一滴みたいな「ポタウ」。「ポタウポタウ」は二本の細い棒を「箸」と呼んだときの飛躍の滴。「ポタウポタウポタウ」は滴の軌跡が固まった三本脚の悪魔で、下半身デルタの一区画を囲って罠をはり、獲物を待っている。「ポタウさん」「ポタウさん」「ポタウさん」という憐れみを誘う声が聞こえる。そうやっていつまでも人を騙してきたのだ。四本脚のポタウが走り出したのは、三月の「もう四月病」と、「来月は『来月は五月病だろう』」と思った昨日、三月十九日。ケモノは僕のまくらもとへ、近づくほどに足音がなくなって、とつぜん僕を引き裂くあの、優しい全部の嘘とホントを、バラさないまま「とき」を、まる呑みした「とき」も、腹の中ではみんな光はごっちゃ混ぜになくあり、取り込まれてまたお腹の音がなり、またみんなのハラノヤミ、見えるのは自信無さ気な、空のように夢の無い、僕と一緒に泣いているポタウさんの顔の空っぽ。
選出作品
作品 - 20150320_897_7971p
- [佳] 三月十九日ポタウさん - お化け (2015-03)
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