冬の 河は
銀の墨ひと筆 で書き記されている
書き記されるものである
ここから見えない 場所 を起点として
人間の物語 が 吹いてくる
立ち枯れた 芒 がそのたび
音を放ち 重ねて放ち
冬至の日の 太陽が徐ろに
傾く そういう匂い
が
する
確かに匂いがする
十数頭の象が かわいそう を背に乗せ
酷寒の夕焼空に 浮かぶ のは
この先のこと。
赤黒い雲を 踏み 鳴らし
暗い鼻を ぶらぶら 揺するのは
この先のこと。
河も河原もまだ十分には暗くない
かわいそう はアカガネ色
かわいそう は鏡面仕上げ
かわいそう は無味・無臭
零下二百七十度の夕焼が焼く
ところの
象たちの苦いシルエットが
この先
明瞭な意味を形成するなら
それもよいそれに身を任せるべきであるが
そうはならない
選出作品
作品 - 20141229_319_7824p
- [優] 象の かわいそう(或いは「未来記」) - Migikata (2014-12)
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象の かわいそう(或いは「未来記」)
Migikata