選出作品

作品 - 20141008_262_7696p

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「プロポーズ」

  明日花ちゃん

始めに言葉がありました
言葉は神とともにありました

私が女学生になり、初めて教わる、聖書の一部は
いつの間にか離れない、神なんてどんなものでも構わないのに
言葉は辛抱強く、またある種ストーカーの様につきまとう。

なんか…あなたみたいだね、
私達は結婚する。

今日はモンシロチョウが二匹、戯れている様子が見えた
モンシロチョウって雄が雌を追っかけるらしいんだけれど
雄が雄を追いかけちゃう場合もあるんだって。
黄色い声と白い声が交互に波打つから
あれは雄と雄だったかもしれない
とっても素直だったし、新鮮な景色を
追い詰める姑息さがまぶしかった

あなたの次にあなたを
その次にあなた、その次に人参のかけら、その次は玉葱。
玉葱は昔から好きだよ。玉葱の絵も描いたよ。幼稚園で描いたの。
今では絵の具もボロボロに使いすぎてしまって
あの頃の方がスモックも汚さなかったし、油の処理も上手だった
ちゃんと教えてくれた絵の先生は、キャンバスの戦士。
おばあちゃんは筆洗い名人。ピカピカの毛並みを自慢げに見せた。
先生の口癖は「キャンバスの縁まで塗ること」。
額縁で見えなくなっちゃうのに、塗る理由って何なの?
先生のプロ意識が見えたしゅんかん。
世界で知っている宇宙人の一人だった。
今何人、キャンバスの縁を塗っている画家がいるだろう。
有名な画家の縁はどうなっているだろう。
縁画集ってないかしら。と、
本屋にダイビングする。
海、海!言葉の海!
波打ち際で、バタバタ!お魚がお尻を振っている。
そうかあ!私は魚釣りに来たんだ!
取っては戻す。取っては開き、戻す。
最初の、一口!
いい魚が旨いとは限らないということか。なるほど。
じっくり待つか、餌を良くするか…よし引け!
お、こ、これは…!
な、ながぐつ?
長靴かよ
なんで長靴なんだよ、えまじで?
ラッキーなうラッキーなう。
じゃあ、ポケモンパン一個と交換で。
条件?結婚??あーもー分かった!分かったから!
するから!すればいいんでしょう、って
なに満たされた顔してんのぶっ殺すぞ

頭からつま先まで、全部つり上げちゃいたくて
心とか身体を湿ったままにしたくなくて
ずっと本当は一緒にいるつもりで
できないから
誰かといるって、誰でもいいから
確認したい欲求とか
私が私であるように本当はずっと祈っててさ。
生きてんのに、歩き出す細胞は理不尽だよ、あれ、祈ってる。
ばっかじゃない
いつからこんなばかだったのかな
前からか、
秋ってムカつくね。

初めて手にした言葉を考えても
初めてを知らない
初めての恋も
初めての部活も
初めての砂場も
ずっと前から夢見ていた
だから大事にしなくてはならないのか
初めて過去を思い出す日常
眺めていた憧れが膨らむ、ふたたび

さりげなく想って、痛みを憶えても
辛くないからね
もう、行こう。

行かなくちゃ。