選出作品

作品 - 20140828_849_7631p

  • [佳]   - 山人  (2014-08)

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  山人

崩落したコンクリート構造物には異型鉄筋が露出し錆びついている
鬱積されたすべてのものがついに限界を迎え、一瞬にして広大な大気圏の天辺に分厚い雲が浮かび、ゆがんだ紫色の空間から雨が降り出した
得体の知れない有害な気体と油脂が雨に混じり、いたるところに降り注ぐ
多くの無機物は熱を帯び、たたかれた雨により冷却され蒸気を上げている
雨が上がるとコンクリートの熱気があたりに充満し、空気がゆがみ陽炎が立ちのぼる
太陽はただ照り続け容赦がない
やがて空は次第に赤く染まり
夕暮れの時が来る
何かが不意に爆ぜる奇妙な音があちこちから聞こえてくる
星星は闇雲に光り輝き、宇宙は平和の坩堝を造形している
風が吹く
風によって薄い紙のようなものがひらつき、かすかな物音が不穏に音鳴る
星星は風によってかき消され、朝方また雨が降り出した
さび付いた異型鉄筋は腐食がすすみ、やがて強風により剥がれて風に飛ばされてゆく
頑なな強度を保持したもの
あらゆるものが劣化を辿り風化していた
とある日の昼下がり
腐食した異型鉄筋の先に一匹の蝿が留まって羽根を休めていた
何かを祈るように手をすり合わせ、ほんの数秒そこで向きを変えた後、不意に飛び去った
蝿の向かう先々にはおびただしい菌類が蔓延り、風にあおられた胞子が煙となって空へと立ち上がっていた