地獄門から見えるこわれた海のかなたに入学式は待っている。
蝶たちはずいぶん長い間待たされ、いっそのこと青虫に戻ろうか
などと背負ったキャベツに相談を持ちかける。
鳥山が立つ海の深層には大きな迷いが泳いでいる。
七回忌にはたくさんの友だちが集まり
七歳の誕生日を祝った。
その席であなたは厳かに言ったのだ。
「私は死んだとき産まれているの」
あなたの言葉は魚になって海の中へと泳いでいき
海の中にいた魚たちは驚いて言葉を喋るようになり
歩き出した干潟が乳幼児の顔した永遠になった。
街では
水曜日のネコが
三日の過去と
三日の未来とを従えて
アンニュイを転がしながらリモンチェッロを舐めていた。
過去と未来がぶつかって
激しく渦巻く今日というネコの墓場で
わたしたちは
空ろな骨を食べた。
ふくっ
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゜
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○
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かすかな声がわたしたちの奥のずっとずっと深いところから ゆらゆら昇ってきた。
ぷくっ
ふくっ
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わたしたちはそれを体に含み たくさんの幼い言葉たちを宿した。
選出作品
作品 - 20140410_454_7393p
- [佳] アジェリッド(湧き水) - 草野大悟 (2014-04)
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アジェリッド(湧き水)
草野大悟