選出作品

作品 - 20140131_220_7268p

  • [優]  return - かとり  (2014-01)

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  かとり

ぼうっきれは
水に浮かばずに 沈み 
底のほうに 突ったって 
小魚たちに つつっかれる全身で
虫の卵を育てる 
気泡は 抜け
ほとけて名前になって
投げ出された 銀塩の陽のもとで
乾ききって千々れ 何だかよくわからないまま
発火して
また名前になって


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(レースの、カーテンが、睫毛に、ちらちらと触れる 光を、散らす 刻々と、距離を、散らす)
(離れていく、忘れている、名前を、浮かべて、振り付ける、眼が、開いていても、瞑っていても、練習を、続けられますように)
(仕方のない、ものだけを、持ちあげる、腕が、うわずる、そばで、レコードが、選ばれているシーンに、ぴったりの曲が、かかっている)
(バーガー食べたい、7日かけて酸を、吐いてしまった夜 包み紙をひらく所作、手づかみで噛みちぎる所作、罪を伝える所作 ごちそうさま そうつぶやく頃には、前もって受けとったお釣りが泳いでいる)


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王国では
日にやけた奴隷たち 使者たちが
預言者の焚火の 筋を見上げて
大臣たち 軍人たち 下女たちも
ぼんやりと覚悟をきめようとしている

卵はつるりと光沢し
不透明度をましてゆく
どうしてこんなにおおきくなった

奴隷のひとりがいきおいよくもどした
時間をだ


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はじける アフロディーテの泡
あるいはどこかで 広がる デュオニソスの液体
組成する ペネローペの糸
ふるえる オデュッセウスの言葉


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排泄
される皮膚が 酸化する
瞬間を覚えている 真っ赤な
口を開いて やかましい
彫像が移動し 何も知らない
月に重なり


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(そしてまた名前になって)


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篠田くん
きみは
青い自転車を かかえ
やはり煮え切らない笑顔をたたえている

消えいる 夏の思い出として
かげろうは増殖し
そこいらじゅうがかげろうだらけだ

ペットボトルの 頭をとりはずし
首に食らい付いて 飲み下すと
冷やりと シャツはしめっている

だまれと言う 
そのうちに 二人きりになったら 
自転車に 乗りこんで海へ 
漕ぎだしていく 
何だかよくわからないまま
何も残さないためだけに


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[EOS]


そしてそしてを
掻き混ぜる 手つきが
なるべく優しく
あらせられますように


[EOS]