嬬恋(つまこい)の深山旅路の割れ早瀬
妹里に流さり慟哭も枯る
※
おしどり十姉妹、妹(いも)だけ逃げた
兄(あに)さん棄てられ止まり木ひとり
啼かぬし喰わぬし目も開けぬ
あんまり蒼ざめ可哀想
緑の竹やぶ放しましょう
いえいえそれも可哀想
カラス来る来る鼬(いたち)も走る
おしどり十姉妹、おのこ鳥ひとり
屋根越え街越え川越えて
おなご鳥どこに行ったやら
黄色いカナリヤといるかしら
紅い雀といるだろか
いえいえそれは人の夢
渡るこの世は鬼猫ばかり
おしどり十姉妹、鳥籠ひとつ
夫婦(みょうと)のさえずり偲ばるる
ブランコ風が揺らすのみ
白い文鳥飼いましょか
それとも鶯買いましょか
いえいえそれはなりません
形見は雨に晒さにゃならん
※
たづねしは卒塔婆になきや妹の名(みょう)
われても末にわたつみのみづ
選出作品
作品 - 20131125_241_7154p
- [佳] おしどり十姉妹 - 海月 (2013-11)
* 著作権は各著者に帰属します。無断転載禁止。
おしどり十姉妹
海月