藪がさわぎ
川面がけばだち 雨風まじり
二日まえから 蜘蛛が棲みつく部屋で
女が 石の子宮に 掌をあてている
鉄橋を渡る貨物列車に耳をそばだて
風の方位を測り
レールの光を 壁になぞり
旅する
竹筒に一輪 侘助は伏し目がち
女が 下からしつこく覗きこむので
花弁は芯から赤らんで
たまさか 窓にさす薄日
畳を這う蜘蛛
色味のとぼしい唇
そろって微笑する
両手で湯呑を包み
背筋を伸ばし 正座している女の ひととき
壁が消え 一面 川の景
部屋が 上流に動いてやまない
選出作品
作品 - 20130311_590_6768p
- [優] 侘び住まい・冬の末 - 鈴屋 (2013-03)
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侘び住まい・冬の末
鈴屋