選出作品

作品 - 20120512_737_6092p

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春の花木によせて・三篇

  鈴屋


天と地の はざまを ぼたん雪は舞いおり ハクレ
ンは 百花を くうに浮かべる 花は雪に 雪は花
にまぎれ 世事におわれ 樹のもとを いそぐ あ
なたの 目にとまらずとも この一日の ひととき
世は ただしく うつくしく

 +
     
ソメイヨシノのにぎにぎしさに こころふたぎ の
がれきた 町のはずれ おりしも オオシマザクラ
一樹 小雨につつまれ あなたは 傘をおさめ 首
をぬらして あおぐ 花よ 花よ 生きてあればこ
そ このさき ついさき 死の なつかしさ

 +

街には だれもいなくて清潔 並木のハナミズキは
ピンクと白 どこまでも 咲きそろい 観るものが
いなければ さらに あかるく はなやぎ 舗石の
すきまにツバナはたわむれ つばめ一閃 ビルの壁
に 窓のかたちをかりて 笑うのは だれ