叔父が息をひきとり、ちょっとだけかける。
バスケットコートにうみがたまり、1999年の、夏のあいだじゅう、ひどく早口の母とぼくは、スコアラーとして過ごしていた。あの黒人選手はスラムダンクをきめ、叔父の骨壷をかかえている父はハンズアップができないままピボットをしているように。ずっと浅瀬だった。
夏が終わる、優勝を逃したのは父だけじゃない。黒人は干からびた珊瑚のリングをゆらしている、そうだ。そのまま父の届かないところにいればいい。母とぼくでおしだしつづけた、うみの上、海上に。少しずつ消滅していく浅瀬は。1999年、骨壷のなかで臭くなっていた叔父をばらまいた。波打際の父がはじめて泣いた、カモメなんかいない年だった。
コートを駆けまわる丸刈りの彼。くろい塊の着地点ですべてが吹き飛んだ。きれいな選手だった。決定的なゲームをあきらめなかった父と同じくらいに尊敬できる男だった。母とぼくは最後の一滴までうみを消滅させて、スコアラーとして過ごしている。
Never Ending Story?
骨壷から叔父の臭い灰が、ずっと向こうの彼方まで、風になった。
一度だけ、叔父と話さなかった。ぼくの、なかで二つ以上の口が、それを赦さなかった。永遠に、ここにはまるいものしかない。
永遠、じゃなく、ただまるめるだけの、夏に、叔父とかわした言葉がなくなっただけだ。バスケットコートから、はじかれた、選手たちの手は、輝かしい未来なんてないと。誰がささやく、そんな奴はみんな、いいところでおわれなかった物語の。いや、本音を言えば、これも、その類なの?
選出作品
作品 - 20120406_863_5992p
- [佳] Never Ending Story - ズー (2012-04)
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Never Ending Story
ズー