私はできるだけそっと触れようと思う
いつか抱いたことのある赤子のように
そのものに慈しみをもって対面する
夜毎悩ます
恨みなど忘れて
丸くもあり角ばりや尖った鋭さもあり
触れると凍てついた氷の温度に驚かされ
反射的に手を離そうとする指先を今
熱い温度を持つ
液体が流れていく
脈を打っているのか命を持つものなのか
それとも触れた私に感化されたのか
影響が状況を変化させて
血を流させる
あるいはそれは涙か
本能に従ってそれを味わってみたく感じて
爪を立て傷口を開き侵入する私の利き手が
内部に潜む本質というものを掴み出そうとすると
激しい悲鳴が
聞き覚えのある激しい悲鳴が聞こえる
選出作品
作品 - 20120403_689_5983p
- [佳] なにか - こひもともひこ (2012-04)
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なにか
こひもともひこ