当然だ
ノートは可燃ごみ
九々を問う
どこかの母親の声が聞こえる
あなたは
胸の内でいちいち答えながら
ベランダで煙草を吸う
あなたの父親が吸っていたものより
ずっと軽く
においも薄い銘柄の
いくら集めたって
再び父はうまれない
七の段は
二度くりかえされる
子供が間違えたのか
そうすることが通例であるのか
あなたは七の段では躓かない
そして
あなたの母親も
九々を問うたりはしない
埋めても埋めても
穴は増えるばかり
九の段まで終えると
子供は眠る前に歯を磨くよう促される
吸いがらを携帯灰皿に片付け
しばらくの間
あなたは二の腕を掻く
掻きむしる
その季節にはまだ遠いが
蚊に食われたような痒みだ
もし祈る気なら
最もぶざまな姿で
あなたは
眠りの最中でさえ
間欠的に掻いてしまうため
爪は皮膚を裂き
生乾きのかさぶたが出来ては剥がれ
めざめたとき
点々、点々と
シーツは血で汚れている
まずは顔を洗え
話はそれからだ
選出作品
作品 - 20110708_471_5345p
- [佳] 反復練習 - 泉ムジ (2011-07)
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反復練習
泉ムジ