シャンパンの泡のような花のトンネルをぬけると
階段があって
階段はコンクリートでできていて
ところどころが欠け落ちていた
すり硝子の幾何学模様を指で辿るように
錆びた手すりの感触を確かめる
赤茶色の金属の匂いが
マチ針を刺す
馬の蹄鉄を穿ってやる
鑼のように鍋を鳴らす
恋人達は深夜零時
思い出を食べあい
消えてゆく為の
祝宴をくりかえす
あなたの足の親指の骨の出っぱったところが素敵だとか
きみのひんやりとした脇腹の脂肪がたまらないだとか
ほっぺをつねりあう 鼻をこすりあう 髪をひっぱりあう
思い出に飽きる頃nemuriがやってくる
■
sex pistolsのようなオレンジ色のあたま
小さなナイフと一緒にバスルームで待っている
rocksteadyのリズムに乗って
バスタブにシャンパンを流し込む
恋人同士を他人同士に戻してやるのが仕事
稼いだコインは泉に投げ込む
「もう少し背が伸びますように」
ちいさなnemuriの小さな願い
■
シャンパンの泡のような花のトンネルをぬけると
階段があって
階段の先にドアがあって大きな音の
マネキンのような人体
ところどころ剥げ落ちた先から
指に伝わる体温の蒸気
待合室のソファーのスプリングに
尻を乗せて数センチ浮遊する
カーペットの色について
toilet paperがホルダーを鳴らしながら
ほそく しろく たなびく 青空の下
ネズミがカリカリ齧り続けるデザインの
明日の朝の目覚まし時計という名前の
新しいTシャツを着た
ガブリエル
おはよう
選出作品
作品 - 20100423_200_4340p
- [佳] L’ecume de Gabriel - はなび (2010-04)
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L’ecume de Gabriel
はなび