ころころと青い梅の実
明け方の静寂になだめられ
きゅうっと一声
氷砂糖の腹に生る
おいしくなあれ
女が腹をさすり
あたたかくあたたかく
臍から溢れる羊水は
ほのかに甘く、舌先で確かめると
頭をごろり
山吹のあおさ
みみずが障子戸に張り付く
陽炎の日を過ぎると
どうしようもなく匂う
薄い腹を押さえ
ふやけた実を
男が一つ食んでゆく
すっぺえなぁ、すっぺえなぁ
また一つ、また一つ
ひとしきりの蝉時雨に
酒の香がなびき
ようやく静まると
水脹れが手の甲に並んでいた
頬の汗を拭う
転んだ一つを食むと
トロトロと流れる
紅い種が割れ
オギャアと一声
腹の音が鳴る
選出作品
作品 - 20100121_016_4102p
- [優] 梅 - リリィ (2010-01)
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梅
リリィ