選出作品

作品 - 20100111_787_4075p

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瞳の奥10センチメートル

  snowworks

話をするとき
相手の瞳の奥10センチメートルぐらいを見るようにしています
そしてちょっと長めに見つめます
勇気が要るけど
その方がインパクトあるかな
なんて思いながら
とくに気になる人には


                  *

目があう人を探していた |鏡を見れば

教室や雑踏の中|もうここにいます

視線はだけど、我侭だから|自分の視線なら

思うようにはなりません|どうにかなります

7月のある日、出会いました|初対面かもしれません

JRお茶の水駅前の交差点|狭い洗面所ですが

横断歩道の向こう側に|そちら側で

僕と同じ探しものしてる彼女|一体どこ見てるの?

目があった時点で|俺?

鼓動が倍になった|驚かすなよ

信号が青になり|見つめあってみようか

歩き始めたのは良かったが|いや だけど

2人とも横断歩道の真ん中で立ち止まった|自分&静止の繰り返し

見つめあいながら|世話がやけます

青信号、点滅して ああ どうしよう|焦っても仕方ない

「ちょっと……おいでよ」|「そこのキミ!」

言葉をやっと胃底から出して|声に出してみる

彼女の手をとった|アナタが一体だれなのか

ゆっくり話すにはいつもの喫茶店がよかった|確かめる

「どういうつもり?」|「アー、」

席について二人の声が重なった|もう一度洗面所に響く

互いの瞳 約10センチ後ろをのぞいて|聞こえてるの? 俺

2つのコーヒーがきた|人の顔は様々変化していく

ブレンドとカプチーノ|だけど他人がみる顔と

僕はカプチーノをとった|鏡で見る顔は一緒なの?

自分がどちらを注文したかも忘れて|考えるほど遠ざかり

彼女は残ったブレンドをとり口をつけた|足掻いたって

「もうやめようよ」|自分は自分だし

「そうしよう」|答えを見つける道のりは

鼓動が半減した|果てしなく



                       *

話をするとき
相手の瞳の奥10センチメートルぐらいを見るようにしています
どうしてって
少しでも同じ瞬間を共有したいからです
お互いが異なったものを見てるのは重々承知して