話をするとき
相手の瞳の奥10センチメートルぐらいを見るようにしています
そしてちょっと長めに見つめます
勇気が要るけど
その方がインパクトあるかな
なんて思いながら
とくに気になる人には
*
目があう人を探していた |鏡を見れば
教室や雑踏の中|もうここにいます
視線はだけど、我侭だから|自分の視線なら
思うようにはなりません|どうにかなります
7月のある日、出会いました|初対面かもしれません
JRお茶の水駅前の交差点|狭い洗面所ですが
横断歩道の向こう側に|そちら側で
僕と同じ探しものしてる彼女|一体どこ見てるの?
目があった時点で|俺?
鼓動が倍になった|驚かすなよ
信号が青になり|見つめあってみようか
歩き始めたのは良かったが|いや だけど
2人とも横断歩道の真ん中で立ち止まった|自分&静止の繰り返し
見つめあいながら|世話がやけます
青信号、点滅して ああ どうしよう|焦っても仕方ない
「ちょっと……おいでよ」|「そこのキミ!」
言葉をやっと胃底から出して|声に出してみる
彼女の手をとった|アナタが一体だれなのか
ゆっくり話すにはいつもの喫茶店がよかった|確かめる
「どういうつもり?」|「アー、」
席について二人の声が重なった|もう一度洗面所に響く
互いの瞳 約10センチ後ろをのぞいて|聞こえてるの? 俺
2つのコーヒーがきた|人の顔は様々変化していく
ブレンドとカプチーノ|だけど他人がみる顔と
僕はカプチーノをとった|鏡で見る顔は一緒なの?
自分がどちらを注文したかも忘れて|考えるほど遠ざかり
彼女は残ったブレンドをとり口をつけた|足掻いたって
「もうやめようよ」|自分は自分だし
「そうしよう」|答えを見つける道のりは
鼓動が半減した|果てしなく
*
話をするとき
相手の瞳の奥10センチメートルぐらいを見るようにしています
どうしてって
少しでも同じ瞬間を共有したいからです
お互いが異なったものを見てるのは重々承知して
選出作品
作品 - 20100111_787_4075p
- [佳] 瞳の奥10センチメートル - snowworks (2010-01)
* 著作権は各著者に帰属します。無断転載禁止。
瞳の奥10センチメートル
snowworks