選出作品

作品 - 20091020_621_3878p

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風染め

  深田

夕べはひとつの終末の凱旋だったねえ、
佐野さん!
櫻庭!
指からしかし虹だ!

そこかしこで追悼の砲を撃てよ
町中には
お前、
どうせ体温が結ばれるから 
幌か有翅類
音の震へ
回転賑やかな花火もいい 
螺子を巻いたか
沸騰する湯
手を叩いてまわれ
摩耗しついにはアスファルトにはいつくばる光のひと際の円さを食めよ、
お前の歯はやさしい

唇の、決壊する またあるいは鼻の穴からの
気泡、
なんてかなしい井戸のテレピン!
舐めるように皮膚を這う
シエンナでない
シアンで
くぐもる蝸牛
布で包めよ
閃くコンセント
火災のような絵の具を塗った人
おっ母さん!
子宮が昼間なのにずっとあすこにあるの

爪先を凝視する、気泡零す嬰児の、晒されゆく既に黒ずんだ皮膚を
あちこち叩けよ
干潮を迎えたサッシで俺はかなしんだ
けれども
薄い、
極めて薄い爪にまで容赦ない、あたたかい あたたかくて気持ちいいを、泣く
ありがたいねえ
酸素の甘さを焦がれ、
腐葉土 匙で土をかけられる、ひどく透明な嬰児の指の先端の 熾烈を
実らせる
数多、
太陽たち!
お前、
あれを落とせ
それぞれ異なるベクトルでちらちら 太陽を名乗るそれぞれとそして派生するものを!
おっ母さんに挿したカテーテルに走る それらの鋭利を絡め取って、
色んな色で
お前、
托鉢の椀に穴を開けた指なんだ
息を吹きかけます
そこから
滲み、溶ける で
俺は風を

夕べは骨が折れたし脊柱なんかは抉られたねえ、
後藤!
指からしかし虹だ!

皹割れ、嘆きながら硝子のように崩れる絵画から零れ 否、乱射されたので
お前、
俺は指で

蝶々! そこにいたの!