選出作品

作品 - 20090506_331_3505p

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西脇弓子

  大女

スペースウォークを見ているレモンジェリーのような虹がかかる小型自転車で色鮮や
かなフードをかぶった子供たちはスケートボードの最中にビルの谷間で熱を放射する、
タバコの吸殻はビッグ・シティのクリップだ、考えるな、西脇弓子の母が保育園に娘
を置いてホテルに向かう、熱帯低気圧が北上する風船を売り歩く男は紙芝居の中盤で
クマのぬいぐるみに着替える、鈍器が山積みされた野原は見知らぬ人が西の空を見上
げホワイトボードに嘘の行き先を書いてぼくたちは帰ってきません、石のように硬い
象がブラックプールを練り歩く、弓子のドレスを脱ぐ西脇弓子の母は娘を保育園に置
いてホテルに向かう、タートルネックの葉型ブラシが首に触っている鏡越しに土曜日
の沙汰で野原は見知らぬ人で溢れたうがいの後に手ほどきを受けるがまんざらではな
いぼくはスペースウォークを見ているレモンジェリーのような虹をハサミでちょん切
るお遊戯サーカス小屋の大女おおおんなは西海岸で絶叫マシーンの魚臭い港に果物を
腐って、フライングブイの翼はとれた記憶にない、鈍器を売り歩くクマのぬいぐるみ
に着替え西脇弓子の母は未婚に違いない娘を保育園に置いてホテルに向かうクマのぬ
いぐるみを追いかける、熱帯低気圧が北上する見知らぬ人がブラックプールで溺れ互
いに助け合い明日には嘘の行き先に辿りついた、もう一度心の底から歌って欲しいと
思うことがあるだけどそれは、西脇弓子の母は母の娘を保育園に置いてホテルに向か
い西の空は歯形が残るフライングブイのようだ翼は、とれた嘘の西脇弓子はおおおん
なだった、鈍器弓子はドレスに着替えホテルに向かうぼくたちは帰ってきません