二十六夜
 ちり花が          
 クリープして        
 またひとり         
 夜の門を          
 くぐりぬけて」        
 ことしの          
 富士は           
 雪ぶかくて         
 そして           
 またひとり         
 夜の門を          
 くぐりぬけて」        
 いった           
              
 カオリナイトが       
 つき立った         
 沼地を           
 春の雨が          
 ぬらし」           
 みずきに          
 ぶらさがった        
 つめの           
 垢             
   がかたまった      
 手首を
 春の雨が
 ぬらして」
 いった
 そして
 またひとり
 夜の門を
 くぐりぬけて」
 マテバシィの
 枯れえだに
 もたれ
 眼窩に
 たまった
 雨水を
 のみほして」
 いった
	
選出作品
作品 - 20090404_860_3441p
- [佳] 八十八夜語り ー季春ー - 吉井 (2009-04)
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八十八夜語り ー季春ー
  吉井