選出作品

作品 - 20090328_734_3420p

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火曜日の水死体

  フリーター

その夜から、朝にかけてのことである、京浜島の壁に打ち着けられた水死体は美しく皮膚がやぶれ、懐中電灯に照らされた顔面からダークな海中へ、ヒラヒラと赤い固まりがはがれていった。

早朝のことである、ビリジアンの絵の具を口に含んだ一瞬に、その味をみていた。歯磨き粉とアクリルガッシュのチューブは似ていない。

前の深夜のことである、ロードバイクから外れたチェーンに転んだ人物は頬と肩と肘とバッグとに強い擦り傷を負った。車の少ない反対車線ではクラクションが鳴らされていた。人物は歩道の縁にぐらつき座り込んだ。

夜更け前その日は雨上がりに人が増えた。サークルKに入るまでの近隣の様子、ショルダーバッグの位置をかえる若い女性、傘を提げている。

こめかみを押さえる頃、57kgの重量の水死体の青年は流れる頬を消毒し、百円ライターを洗面所に落とした。