選出作品

作品 - 20090321_652_3413p

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アポロ計画、以後

  こんぶ

何かいらっときて
未来を担う子供の為に
というような誰かが言っていたことを思い出した
まさに今、その未来にいるようだが何ひとつ実感なんてありゃしない
生き切れてない気がしていた
どうしたらその実感が得られるのか
考えただけで途方に暮れてから
見習いの天使が天使は元々天使だったと言ってやめてしまった
必要なのはもっと大きな実感だった
それは途轍もない計画だった気がする
途轍もない計画では誰ひとりやっぱり救えそうになかった

なんとなく月を見上げてても
面白くもなんともないので歩き出しては、
もう分からないことは恥ずべきことじゃないと思えるには
遅い気がして、とりあえず考え始めた
もっと大事な事に近付きたかった
人生のおおよそそんなもんだった
でもそんな真面目に考えないどうでもいい時間が多過ぎた

永遠平和のためにという言葉だけが
湿ったまま染み付いている
否定する気はこれっぽっちもない
それは分かる
立てた作戦は全て失敗に終わっている
おおげさだった
わざわざ書こうとすると
全部、おおげさになった
月では殺人事件が一件も確認されていないから
また最初から始めるというような途方もなく
それでいて短絡的な計画だった
僕らは故郷が一つはないとひねくれてしまう動物だから
全員で月移住はいいかもしれないというような
誰にも言えない計画だった
全員で地球という故郷だけを眺めていりゃあ
争わなくてもいいんじゃないかと思うようなあほみたいな計画だった
土台無理な計画だった
そんな計画を思ってセンチメンタルになるだけの俺と
そういう事がロマンチックで面白いなあ
なんて思う俺には誰ひとり現実的に救えないような気がしたが
そのうち忘れることも知っていた
そしてまた何かいらっとする
そのうち忘れることも知っていたから