選出作品

作品 - 20081210_186_3204p

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冷製の夜

  りす

さめてしまう眠りのなかに
鉄のスプーンをさし入れ
夢のとろみをまわす
まだ温かい
液状のわたしはどこへでも流れ
私をすくう匙加減は
夢のなかでも 夢ではない

夜という浅瀬を破り
小舟たちが眠りへと漕ぎだす
数人の仮死と袖が触れあう
夢をみたと言えば許される人の
口を摘みにやってきたという
青く錆びたスプーンを
口元に強く押しつけられて

寝苦しい夜のふちに手を掛け
眠りを傾ける
唇を寄せて
冷めた夢を啜る
水っぽい私の味がして
暗闇でじわりと
喉が鳴る

華奢な小舟の腹を噛むと
甘い血が舌を走った
まだ温かい
わたしが手足に運ばれ
夜半 
満ちるように
ふいに上体を起こす