選出作品

作品 - 20080930_742_3051p

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八十八夜語り ー風舞ー

  吉井

十九夜
 火色に沈着した
 妻のクリトリスに
 藪蚊の夫婦がとまって
 交尾している
 円卓の縁の辺りには
 平皿に盛り付けられた
 鮎並の唐揚げが置かれてあって
 掛け時計の振り子に捕まって
 飛べずにいる塩辛とんぼが
 ダビンチコードを解いている
 破れ網戸のむこうでは
 日焼けした
 名代生姜焼きの親父が
 自分のいがぐり頭を掻いている
         もう秋だというのに

         L’automne de ja! ― Mais pourquoi regretter un eternal soleil,
        si nous sommes a engages a la decouverte de la clarte divine,
        ― loin des gens meurent sur les saisons.
                         (Une Saisons en Enfer;Adieu)

         もう秋だというのに!俺たちは―― 季節にうずもれ果てて行く人々
         から袂を分かって ―― 此の世にない光の源に辿り着こうとしていた
         はずなのに、相も変わらぬ陽の光を懐かしんでいるのは一体どうして
         なのだ。               (地獄の一季節 別れ)

 あなたが鳥でない理由
 わたしが人である理由
 そんな理由はどこにも無い