風が
流れて
流されて
肌に、
指先に、
包み込むしぐさで
くるり、と
やさしく触れて
そうして
そのまま
遠い南の
どこまでも青い
空を呑み込んだ海のある
遠い南の
やわらかな砂の上に
ふわり、ふわり
降り立ちたいと、
たとえ
形を無くして
砂の一粒に
消えたとしても
降り立ちたいと、
そう、
願う心ごと
風は、
するりすり抜けて
遠いところへと
流れてしまうから
思い事
ひとつ、ふたつ
抱きしめたまま
わたしは、
人よりも
ほんの少しだけ
小さな歩幅で
過ぎ去っていく季節の
か細い声に
寄り添いながら
灰色の
まあるい空がまたひとつ
せかいの器に
重なっていくのを
手を振って
見送っている
選出作品
作品 - 20080918_552_3030p
- [佳] 思い事 - 雨宮 (2008-09)
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思い事
雨宮